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鳶職におけるフルハーネスの重要性と最新安全基準

建設現場において高所での作業を担う鳶職は、日々リスクと隣り合わせです。とりわけ2メートル以上の高所作業では墜落による事故が多く発生しており、命に関わる重大な事案となります。こうした背景のもと、厚生労働省は労働安全衛生法の改正を進め、2022年からフルハーネス型の安全帯の着用が原則義務化されました。

本記事では、鳶職に従事する方やこれから現場に関わる方々に向けて、フルハーネスの正しい知識、安全確保の観点からの運用方法、さらに現場に導入することで得られる効果について詳しく解説します。


フルハーネスとは何か?

フルハーネスの定義と構造

フルハーネスとは、肩・胸・腿を複数のベルトで固定し、墜落時に身体全体へ衝撃を分散させる構造の安全帯です。胴ベルト型に比べて、落下時の内臓や腰椎へのダメージを大幅に軽減できる点が特長です。

構造は主に以下の通りです:

  • 肩ベルト(左右の肩から腿まで繋がる)
  • 腿ベルト(左右の太ももを支える)
  • 胸部ベルト(身体の中央を安定させる)
  • D環(背中中央に位置するフック装着用リング)

フルハーネスの種類と選び方

作業内容に応じて適したフルハーネスを選定する必要があります。例えば、狭所での作業が多い場合は、スリム設計の軽量タイプが望まれます。また、夏場の作業では通気性に優れた素材のものを選ぶことで、着用ストレスを軽減できます。

サイズ調整が可能か、フィット感が体格に合っているか、D環の位置が適正かなども重要なチェックポイントです。


鳶職におけるフルハーネスの使用義務

法令による義務化の背景

墜落事故の増加を受け、2019年の法改正により、従来の胴ベルト型安全帯は高所作業での使用が原則禁止されました。鳶職が従事するような構造物の組立や解体などの作業は、すべてフルハーネス型安全帯の使用対象となります。

この改正により、現場管理者には労働者へのフルハーネス支給と教育の実施が義務付けられています。

適用される作業シーン

鳶職における具体的な対象作業には以下が含まれます:

  • 足場の組立・解体
  • 鉄骨の建方作業
  • 橋梁建設の高所作業
  • 仮設構造物の設置

いずれも2m以上の高さで、かつ作業床が設けられていない、または囲いが不十分な場合にはフルハーネス着用が必須です。


フルハーネスの正しい使用方法

着用手順とチェックポイント

  1. ハーネスを広げてベルトのねじれがないことを確認
  2. 肩ベルトを肩にかけ、胸ベルトをしっかりと留める
  3. 腿ベルトを太ももに通して固定
  4. 最後に背中のD環とランヤードを連結

着用後は鏡などを使って全体のフィット感とD環の位置が背中の中央にあるか確認してください。

使用時の注意点

  • ランヤードの取り付け先は、必ず強度が保証された構造体へ固定する
  • 移動の際は常に1本のランヤードが支点に連結されている状態を維持する(二丁掛けが基本)
  • フックの掛け外し時に誤って足場外に体を乗り出さない

フルハーネスのメンテナンスと管理

定期点検の重要性

毎日の使用前点検に加え、月1回以上の定期点検を推奨します。

  • 縫製部のほつれや糸切れ
  • 金具部分の変形や腐食
  • ベルトの劣化(硬化、破断)

異常が見られた場合は直ちに使用を中止し、交換または修理を行う必要があります。

保管方法と交換時期

  • 高温多湿を避けた通気性のある場所で保管
  • 雨や泥で濡れた場合は完全に乾燥させてから収納
  • 使用頻度により異なるが、目安として3〜5年での更新を推奨

鳶職人が知っておくべき最新情報

新規格のフルハーネスとは?

厚生労働省の通達に基づき、新JIS規格(JIS T 8165)に適合した製品の使用が求められています。旧規格製品は経過措置期間を過ぎると使用不可になるため、今後は新規格品への移行が必須です。

新規格では、耐久性の検査基準がより厳格になっており、製品ごとに適用作業範囲が明記されています。

フルハーネス特別教育の受講義務

2022年以降、フルハーネスを使用する作業員は「フルハーネス型墜落制止用器具特別教育」の受講が義務化されました。

講習内容は学科と実技に分かれており、未受講の場合は現場での作業ができません。事業者には受講の証明書保管義務もあります。


フルハーネス導入による現場の変化

安全意識の向上と事故の減少

実際にフルハーネスを導入した現場では、作業員の安全意識が向上し、転落事故が顕著に減少したという報告が多く見られます。見た目にも安全意識を喚起する効果があるため、第三者からの信頼向上にもつながります。

作業効率への影響

一方で「着用が面倒」「動きづらい」といった声もあります。これに対し、近年は軽量で動きやすい設計の製品が各メーカーから登場しており、従来品に比べて大幅に着用感が改善されています。

また、使用者の声を取り入れたデザイン変更により、作業効率を損なうことなく安全性を確保する製品が増えてきています。


まとめ

鳶職における安全対策の中でも、フルハーネスの導入は最も重要な要素のひとつです。法令によって義務化が進む中で、安全に対する意識と知識の向上は避けて通れません。

適切な製品の選定、正しい着用方法、定期的な点検・管理を徹底することにより、現場全体の安全性と生産性を向上させることが可能です。

東宝プラントでは、社員一人ひとりが安全を最優先に考え、フルハーネスの正しい運用を徹底しています。これからも「安全第一」の現場づくりを推進し、誰もが安心して働ける職場環境の構築に取り組んでまいります。